
飛行機や客船が事故に遭い、生存者が無人島に漂着しそれまでの立場が変化するというパターンは、古今東西様々な映画で描かれてきた。古くは『流されて…』(1974年)とか、最近だと『逆転のトライアングル』(2022年)とか、ちょっと違うけど『元カレとツイラクだけは絶対に避けたい件』(2020年)なんていうのもあって、みんなそれなりに面白い。
物語は…上司ブラッドリーからのパワハラに苦しむ部下のリンダは、出張のために乗った飛行機が墜落しまい、孤島に漂着する。リンダには元々アウトドアのスキルがあり、サバイバル能力に長けている。一方ブラッドリーは足を負傷したが、横柄な態度は社内のまま。島で完全に立場が逆転したリンダの中に復讐心が芽生えていく…というもの。
これ以上ないくらいのシンプルな筋立てを、退屈させずに見せるにはやはり脚本が練られていなければならないが、この作品は筋に緩急があってそこを見事にクリアしている。そして監督は『死霊のはらわた』(1981年)、『スパイダーマン』(2002〜2007年)のサム・ライムなので演出も手堅い。程よくグロいがグロすぎないという塩梅がさすがである。
少し気になったのは、この手の映画にしては映像がクリア過ぎる点。どのシーンもくっきりはっきり映っていて「暗くて見にくい」みたいなストレスはまったくない。暗いシーンは「何が映っているかちゃんと見える暗さ」でキレイに撮られている。
メインの舞台となるビーチはロケーションだと思うが、重要な舞台となる崖や、複雑な特殊効果が必要なジャングルなどのシーンは明らかにセットで撮影されている。その昔この手のB級映画は予算の都合上オールロケとか、ほとんどロケの作品が多かった(セット撮影には予算がかかるからね)。当時はロケの荒っぽさや、照明が行き届かない暗さなどが映画に妙な迫力やリアルな雰囲気をもたらしたものだったが、この作品は俳優やスタッフの安全や、画面のクリアさを優先しのだろう。そして予算もしっかりかけられた映画だということである。
それこそ『死霊のはらわた』の頃のサム・ライミは知る人ぞ知るインディペンデント・ホラーの鬼才だったわけだが、『スパイダーマン』以降はハリウッドを代表するヒット・メイカーになり、きちんと予算をかけた映画を作れるようになったわけです。
そしてこの『HELP /復讐島』という作品も、マニアなファンだけが観る作品ではなく、サム・ライミのことなんて知らない普通のOLやカップル、下手したらファミリーとかでも気軽に楽しめるような作品に仕上がっている。今後配信などが始まったらさらに多くの人が楽しむだろう。どす黒かった頃のサム・ライミファンとしては少し寂しいけど。
主演のリンダ役レイチェル・マクアダムスはさすがである。本人はもちろん美人なのだが、“男からはあまり好かれないタイプの女”を実にうまく演じている。孤島で二人っきりなのに“性”の匂いをさせないのもレイチェルの功績だろう。グロシーンも体当たりで、これまた観客(特に女性の)共感度は高そうだ。
あと、タイトル(邦題)がわかりやすくていいね。今はやたら原題そのままのわけわかんなタイトルが多くて困る。とにかく難しいことを一切考えずに2時間弱をワイワイ楽しむにはもってこいの映画である。
2026年2月5日(木)@TOHOシネマズ日比谷 スクリーン5










































