
我々世代にはたまらない名作上映企画『午前十時の映画祭』で1985年日本公開の『アマデウス』4Kレストア版が上映されることになった。もちろん公開当時に劇場鑑賞し面白く観た記憶はあるが、それ以降1回も観ていなかった。
というのも、当時は僕はまだ若く、この映画について少し「真面目で堅苦しい」という印象を持ったのかもしれない。なので、今回の上映も観るべきかかやめるべきか迷った。さらに最寄りの映画館が池袋グランドシネマサンシャイン・シアター6で、ここはアップグレードのBESTIAスクリーンで追加料金が300円かかってしまう。4Kレストア版とはいえ、40年前の映画に追加料金300円出す程の価値があるかな?と、正直悩んでいたのだ。
で、グズグズしていたのだが結局「見逃して後悔するより観て後悔だ」と気持ちを切り替え、公開2週目の日曜日にチケットを押さえて劇場へ向かった。上映シアターのキャパ235席はなんと満員。朝9時55分スタートの回なのにオトナの観客ですごい熱気だ。
ピーター・シェーファー作ブロードウェイの舞台劇を『カッコーの巣の上で』のミロス・フォアマンが映画化。天才音楽家ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの知られざる半生を、彼を妬む宮廷作曲家サリエリの視点で描く物語。すっかり忘れていたが米・アカデミー賞の作品賞、監督賞、主演男優賞(F・マーレイ・エイブラハム)など堂々8部門を受賞している名作である。
で、40年ぶりとなる再鑑賞の感想だが「凄まじく面白かった!」。上映時間2時間41分があっという間に過ぎていく。特に印象に残るのはやはりサリエリのモーツアルトへの嫉妬と尊敬がせめぎ合うクライマックスのシーンだが、それ以外にも85年当時は気づけなかったことも色々わかるようになって、初めて観た時よりも深く感動した。
なんといっても全編映画としての精度の高さが圧倒的だ。隙のない濃密なドラマの中に、モーツアルトの名曲の数々を「これでもか!」とバンバン挟み込んでくる。まさにモーツアルトのオールタイム・ベストを彼の生涯の物語付きで鑑賞できるゴージャスな体験だ。しかも今回観た池袋の劇場はめっちゃ音が良くて、深く響いたり、広く包み込まれるようになったりと本当に素晴らしかった。さすが300円の追加料金をとるだけのことはある(しつこい笑)。
そして驚いたのは観客のほぼ全員が、ものすごい集中力で映画を見ていたということ。もちろん売店でポップコーンやスナックを買ってきている人もいたけど、バリバリものを食べるような音を立てる人は一人もいなかった。まるで観客全員が劇場を満たす音楽を一音も聞き漏らさないようにしているかのようだった。
さらにエンドロールに入っても誰も席を立たず、終わった瞬間には結構盛大な拍手が起こった。僕も「コンサートじゃあるまいし」とか思いつつ、一緒に拍手してしまった。日本人はシャイだから、もちろん観客全員ではなかったけれど、多くの人がこの映画を心から楽しんだことがわかる、実に感動的な劇場体験でした。観るのをやめないで本当に良かった。
いつかまたこの作品が劇場公開されたら、今度は何十年も空けずに必ず観に行きたい。その時もぜひグランドシネマサンシャインの素晴らしい音響と大きなスクリーンでの上映だったらいいなと思う。ちゃんと追加料金300円払いますから笑。
11月16日(日)@池袋グランドシネマサンシャイン シアター6BESTIA
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