
皆さんと同様に日常的にYouTubeをダラダラと観てしまう。面白い動画が無限に出てくるのであっという間に時間が経ってしまうのだが、そんな動画の中にたまに公式に無料で観られる映画がアップされている時がある。それは新作映画のプロモーションとして関連作品や過去作などを期間限定で配信しているものや、何の脈絡もなく無料公開されているB級的な映画もある。暇な土曜日にそんな無料映画の中から、つい観てしまったのが2020年製作のオーストラリア製SF映画『ジェノサイド004』(原題はMonsters of Man)である。(※ちなみに我が家ではテレビモニターでYouTubeが観られるのでパソコンで観たのではありません)
なんせこの手の映画は資料が少なく、以下記述情報にミスがあるかもしれませんがあしからず
軍事用AIロボットを極秘に開発をしている企業とCIAが協力し、東南アジアのジャングルで4体のロボットのテストを行う。しかし4体のうちの1体は、パラシュート降下時の着地ミスで故障。ロボットは残りの3体で麻薬を製造しているジャングル内の村を襲撃し始める。時を同じくして、アメリカからやってきた医療ボランティアのグループが車の事故で立ち往生し、村に助けを求めていた。極秘開発のロボットが村人を殺戮する様子を目撃したことによって、彼らもまたロボットに狙われることになる…というストーリー。
内容はいかにもB級SF映画といった感じのノリで「つまらなかったらすぐ観るのをやめればいいや。どうせタダだし」と思って見始めたのだが、意外にもグイグイ引き込まれて最後までワクワクしながら観てしまった。数少ない資料にはインディーズ映画と書かれていたが、これはいわゆるワーナーとかユニバーサルとかいった「大手スタジオ」による映画ではない、という意味だろう。もちろんハリウッドの基準からいったらかなりの低予算なのだろうが、画面にそういうショボい感じは一切ない。スタジオ製作の映画と比べても全く遜色ない完成度だ。
この手のジャンルは80〜100分程度の上映尺が普通だが、なんとこの映画は131分。通常ならかなり長く感じるはずだが、展開にバリエーションがあって、最後まで全然飽きさせない。
後半はロボットの襲撃から逃げようとする医療グループをロボットが追跡するくだりがメインになっていくが、「誰が生き残れるか?」というサスペンスの展開が実に見事。例えば普通トム・クルーズようなスターが出演していたら観客は「まあトムは最後まで生き残るだろうな」と予測がつくが、この作品の場合は有名な俳優が全く出ていないので、誰が殺されるか全くもって予断を許さないのだ。そしてストーリー上、地雷の爆破や時限爆弾、銃撃、殺傷といったシークエンスも多いが、その間合いも単調じゃなく見応えがある。
さらにVFXもかなり使われているけど、それ以外の画作りも素晴らしい。ジャングルの中の撮影がメインなので、ああいう場所でロケをして理想的な画作りをしていくのはかなり大変だと思う。自然は人間の思い通りにはならないからだ。しかしこの映画は実にストーリーに即した的確な画を捉えているし、木や緑だけではなく、遺跡や洞窟を使って見せ場のバリエーションを増やし、横構図になりがちな展開を縦構図のシーンの展開にするなど大いに工夫している。
監督・脚本はマーク・トイア。全く情報がないのでどんな経歴の人かわからないが、もし、情報通りの低予算でこの映画を作ったのだとしたら相当の才能だと思う。例えばかつてのジェームズ・キャメロンは『ターミネーター』(1984)、『エイリアン2』(1986)をその完成作からは想像もできない低予算で作り上げている。『ゴジラ』(2014)や『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)『ザ・クリエイター/創造者』(2023)のギャレス・エドワーズだってデビュー作の『モンスターズ/地球外生命体』(2010)は超低予算映画だ。ジョン・カーペンターやデビッド・クローネンバーグも初期は低予算でありながら、それを感じさせない面白い作品を作ってきた。マーク・トイアが数年後にキャメロンやギャレスのようになる可能性は低くない。少なくとも「マーク・トイア」という名前を記憶しておく価値はあると思う。
それにしても日本で劇場公開されないユニークな映画はまだまだいっぱいありますね。ぜひポップコーンを用意して暇な休日にでも楽しんでください。
10月31日 YouTube鑑賞